投扇興(とうせんきょう)


投扇興 投扇興 枕 投扇興 蝶
高得点の例:方式により各「」があります 」蝶を乗せる台 」的です。2種類
投扇興 扇 投扇興 扇
」戸羽の会式で使用 」他の方式で使用
投扇興 点式 投扇興 点式 投扇興 点式
点式」儀礼文化学会(同古典遊戯研究会) 点式」戸羽の会:山崎恵水:
源氏物語・小倉百人一首
信行六人歌松園女史画投扇興
:上村松園:宮脇賣扇庵

【概 要】:
中国からの伝来は奈良時代であったが、明和四年(1767)に、田中江南が中国の「投壺格範」を研究、紹介したのをきっかけに 「投壺」が流行した。そのときの「投壺」からヒントを得て、安永二年(1773)頃、創作された遊技であるとの説が一般的である。
『同年六月頃、投楽散人其扇が、昼寝から目覚めてふとみると、「木枕」の上に一匹の「蝶」が羽を休めていた。 いたずら心から傍にあった「扇子」を取り上げ、「蝶」を目掛けて投げたところ、「蝶」はどこかに飛び去って「扇」は「木枕」 の上に乗ったままいなっていた。「蝶」の代わりに文銭十二枚を紙に包み、「木枕」に乗せて「扇」を投げ落とすという遊びを考えつき、 練習を重ね、ついには達人の域に達したという。この話を江戸で泉花堂三蝶が話していたのを、投扇菴好之が出版した』
奇しくも、この年及び次年初めに次の四冊が出版された。
「投扇例:投楽散人其扇著」「投扇興図式:泉花堂三蝶述、投扇菴好之撰之」と「投扇新興:遠州屋久次郎著」「投扇興譜:駿河屋藤助著」
(役が既に異なる事から、京都と江戸の二カ所(以上)での同時期に発した投扇興が各所に伝わり流行し、創作話(或いは言い伝え) と技法とともに書物として紹介出版された、とみるのが自然。)
投扇興は、庶民を中心に伝承、遊ばれて遊戯で、多くは、酒席での座興、芝居者の落屋での手慰み、あるいは色街や街角の賭け事として もてはやされた。
投扇興の遊技は、一定の箇所に置かれた「枕」の上にある「蝶」に向かって、一定の位置から的である「蝶」に「扇」を投じ、 その「蝶」と「枕」と「扇」の形から「点式」があり、多くは百人一首或いは源氏物語の五十四帖の名に形と得点が定めれている。
現在は、平成流行をしており、一〇以上の任意団体(或いは集まり)があり、それぞれ独自の点式およびルールを指定しています。

【道具の説明】:
1.蝶(的) 歴史文書にでてくるのに近いのは「儀礼文化学会式」。工芸品として残っているものを復元したのはその他の方式。的により、 点式の出方が異なってきます(有る無しより、確率の問題)。
 #過去の例:一文銭12枚を15cm格の銀紙でくるんで水引で結んだもの
 #当店遊技場では、両方を用意しています。
2.枕(台) 蝶(的)を立てます。木製で蒔絵が描かれています。
 #当時は木枕を使用し、また作られたものは、蒔絵有りの記載がみられます。
3. 5本  方式により扇の形状と作りが異なります。
 #過去は、12骨(軒)との記載が多い。一般には、通常の扇で良い。
  注:戸羽の会の扇は12骨。儀礼文化は記載無し(会では8骨を使用)。都御流は8骨。
 #当店遊技場では、両方をご用意しています。
4.毛氈 枕と蝶を置き、競技者との間合いとなります。
 #投じる距離は、儀礼文化学会式は、扇5本分の長さ。戸羽の会と都御流は、扇4本分の長さ。
5.賽子 先行後攻の決定に使用します(都御流式では扇拳で決めます)。
6.点式表 ※各方式の点式表があります。
7.記録紙 ※当店でご用意致します。
8.座布団 ※投じる時、各方式、正座で投じます。また、的との距離を固定するのに良い。

【遊び方】:
 当店では、下記の三方式でお遊びできます。
 遊び方・投じ方・点式の判定は、3方式とも「投扇興研究室:其扇庵匠胡 著」で わかりやすくまとめられていますので そちらをご参照いただくのがよいかと思います。
なお、戸羽の会式は、市販道具の中に遊び方・点式と点数表が入っています。都御流式のものも同様、市販道具の中に点式が入っています (但し、遊び方は一般ルールで都御流式の遊び方は入っていません)。 儀礼文化学会式の遊び方・点式は市販されていません(同方式でお遊びいただくと記録紙として配布されます。)。
なお、各方式とも各HPでは遊び方や点式が公開されていませんのでご注意ください。
 ※当店でお遊び頂いた方式の「記録紙」はお渡し致します。

 (1)儀礼文化学会
 (2)戸羽の会
 (3)都御流

横濱遊技倶楽部ローカルルール:
 (1)投じ方:手首で投じるものとする。
   距離扇四本の場合は、腕を伸ばさない、脇を大きく空けない(10cm以内)ものとし、距離扇五本の場合は腕は伸ばしても良いものとする。
 (2)姿勢:正座にて、左手は膝の上、前屈みにはならない。

【各方式の違い】:
 他に東京では「浅草・其扇流」があり、その4つの違いを簡単に私見で説明します。
1.共通
 いずれも昭和戦後後期から平成時代に過去の文献や記録から復元されたものであり、現代風にアレンジされています。
2.儀礼文化学会
 蝶(的)は、手作りで作成できるもの。形の20(及び無点)種が絶妙にできており、わかりやすさ、形からの点の高低ともよく出来ています。
3.戸羽の会
 国内で、戸羽の会の投扇興の道具が一番普及されています。遊び方も簡潔で、気軽に遊べ、わかりやすいです。
4.都御流
 過去の文献からの投扇興と日本伝承文化との複合型。点式の形は、忠実に源氏物語54帖の銘定が全て描かれています。 遊び方は、香道の香盤道具での進め方に近いです。
5.浅草・其扇流
 競技用投扇興としたもの。遊び方、投じ方も競技的にあります。

【投扇興講座】
学んでお遊びしたい方は、次に講座があります。
横浜文化教室古典遊戯講座投扇興
資料、解説、投じ方、点式の見立、遊技法

【その他】
古典遊戯場での投扇興の様子は、
 ・2004年4月18日神奈川TVK「あっぱれ神奈川(1部)」で放映
 ・2005年2月26日ほか、iTSCOM他ケーブルTV5局で「今からいこう」で放映


参考文献:
 ・「雑藝叢書 第一」早川純三郎:國書刊行會 ※「投扇式」収録
 ・「日本遊戯史」酒井欣 著:拓石堂出版(原本発行所:建設社)
 ・「日本の遊技」小高吉三郎 著:拓石堂出版(原本発行所:羽田書店)
 ・「賭博 V」増川宏一 著:法政大学出版局
 ・「嬉遊笑覧」喜多村筑庭 著:[出版社は近年三カ所から発行:名著刊行会、吉川弘文館、岩波書店]

 ・Gambling&Gaming第4号「投扇興の歴史と現状」:高橋浩徳:大阪商業大学アミューズメント産業研究所
 ・「投扇興」について:儀礼文化学会遊技文化研究会
 
 ・源氏物語投扇興:山崎惠水
 ・小倉百人一首投扇興:山崎惠水
 ・信行六人歌松園女史画投扇興:上村松園:宮脇賣扇庵
 ・其扇流配布資料(其扇流銘定、投扇興得点控、投扇興進行次第)

 なお、一次資料、二次資料として、次が上げられている。
江戸期
  ・「投扇例:投楽散人其扇著」
  ・「投扇興図式:泉花堂三蝶述、投扇菴好之撰之」
  ・「投扇新興:遠州屋久次郎著」
  ・「投扇興譜:駿河屋藤助著」
  ・「投扇式:松本伊兵衛」
  ・「投扇式:珍々居士」
  ・「投扇興仕方」
  ・「扇容曲」
  ・「投扇記」
  ・「投扇興仕様」
  ・「投扇興点式図」
  ・「投扇例 全」
  ・「武江年表」
  ・「投扇興図会」
明治・大正期
  ・「古事類苑・遊戯編」
  ・「伝家宝典明治節用大全」
  ・「風俗画報219号」
 
所属会員
  ・儀礼文化学会 普通会員
  ・戸羽の会 会友
  ・其扇流 会員 

[2004.4/30 乾信治]


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