【概 要】:
第六十一代朱鳥天皇時代(前)に中国から伝来されたものと言われる。国内では投扇興の元になった。現在、遊技としては日本と中国共に無い。投扇興が比較的庶民中心に遊ばれ、賭博としても用いられ、道具も扇があれば、蝶は「おひねり」で代用する等で遊べたが、投壺は、技法、道具、図式、の規定が「複雑」「厳格」であったこともあり、衰退を早めた(例えば、壺の種類が三十八種定められていた、投入法もいろいろあり法則や格などが定めれていた等)と思われる。
投壺の遊技は、一定の箇所に置かれた「壺」に向かって、一定の位置から「矢」を、その「口」或いは「耳」の中へ投げ入れるものであって、その「矢」の投入方によって、得点が定めれている。
なお、規定で耳の方が小であり、点式もほとんどが「壺:耳で1:2」としている。
【道具の説明】:
1.壺[壷] 1個 真ん中の的位置を「口」という、左右の輪を「耳」という。
2.矢 12本
3.矢立て 1個 遊技者の脇に置き、矢を入れ置く。
4.毛氈 壺を置き、競技者との間合いとなる。
5.賽子 先行後攻の決定に使用
6.点式冊子
7.記録 半紙と筆
【遊び方】:
横濱古典遊技倶楽部ローカルルール:
(1)壺から遊技者膝まで三尺(約91cm)或いは五尺(約152cm)とする。
(2)矢は、一競技十二本とし、簡略する場合は六本投げて競う。
遊技者交互に投げず、競技本数連続して投じるものとする。
(3)遊技者は、正座し、姿勢は正し、左手は膝の上とし、投矢法は、
格上を、下手より上に投じるものとし、
格中上を、上手(耳高さ)より投じるものとし、
格中下を、下手(肩高さ)より投じるものとし、
格下を、前手(手を伸ばし)上手(位置自由)より下に投じるものとする。
投入法は、競技前に決定する。また、ハンデとしても用いる。
(4)天井に矢が当たりしは、不中扱いとする。
(5)得点は、次の形からとする。(単位「算」)
- 有初(ゆうしょ) 10
- 貫耳(かんじ) 10
- 連中(れんちゅう) 5
- 散箭(さゆき) 1
- 初有貫耳(しょゆうかんじ) 20
- 連中貫耳(れんちゅうかんじ)20
- 横耳(おうじ) 1
- 横壺(おうこ) 1
- 倚竿(いかん) 全壺時は貫耳同、地に落ちれば不中同
- 耳倚竿(じいかん) 全壺時は貫耳同、地に落ちれば不中同
- 倒竿(たうかん) 過去分含め不中
- 倒耳(とうじ) 過去分含め不中
- 全壺(ぜんこ) 十二本とも矢が皆中することを言う。勝負終了。
- 有終(ゆうしゅう) 15
- 有終貫耳(ゆうしゅうかんじ)30
- 驍箭(ゆうせん) 復投し、貫耳或いは不中に同じ
- 帯劔(たいけん) 不中同
- 龍首(りゅうしゅ) 18或いは倚竿
- 龍尾(りゅうお) 15或いは倚竿
- 浪壺(ろうこ) 14或いは倚竿
- 敗壺(はいこ) 全不中。勝負終了。
(6)記録は、次の様に記載する。
記紙は横長にし、縦書き、毛筆を原則とする。
- 右段
+ 「投壺之記」
+ 場所名
+ 「会」の場合は、その名称
- 中段
+ 競技者名
+ 投入方を形を横書、1投から12投を上から列記す
複数の組み合わせによるものは、左に記す
+ 点を形の右に記す
+ 合計点を最下段に記す
- 左段
+ 日付
+ 審判名、立会人名
参考文献:
・「雑藝叢書 第一」早川純三郎:國書刊行會 ※「投壺指南」収録
・「日本の遊技」小高吉三郎 著:拓石堂出版(原本発行所:羽田書店)
・「日本遊戯史」酒井欣 著:拓石堂出版(原本発行所:建設社)
・「嬉遊笑覧」喜多村筑庭 著:[出版社は近年三カ所から発行:名著刊行会、吉川弘文館、岩波書店]
・Gambling&Gaming第4号「投扇興の歴史と現状」:高橋浩徳:大阪商業大学アミューズメント産業研究所
なお、一次資料、二次資料として、次が上げられている。
・「礼記」
・「投壺指南」
・「投壺矢勢図解」
・「雅遊漫録」
・「武江年表」
・「和漢三才図會」
・「倭名類聚抄」
・「童蒙先習」
・「和名抄」
・「中華伝統遊技大全」
・「和漢三才図会」
また、図式の詳細があるのは「雅遊漫録」「投壺指南」「投壺矢勢図解」である。
[2004.4/24 Nobuharu Inui]